中国での十仏信仰

盆経2日目が終わりました。
昨晩からの雨のおかげか、今日は幾分暑さがやわらいだような感じでしたね。
でもまだ8月2日、暑さはこれからが本番ですね。

告知です。
来週8月9日(金)夜9時よりインターネット放送「丸へそTV」が、「和・札所・浴衣」と題して金倉寺より生放送!
番組放送と平行して、坐禅や写経が行われるようです(笑)
私、哲済も登場しますので、どうぞご覧いただければと思います。

さて、お盆特集の「先祖供養」(YUJ第6号より)。
今日は「中国での十仏信仰」です。

仏教は中国を経て日本へと伝わってきました。
インド人の四有といった哲学的考察に対し、中国人は具体的な説明を求めました。
そこで冥界の主、閻魔王が登場することになります。
こうして私たちも知る死者の世界が、その姿を現すのです。

人は死ぬと霊となって、冥土への旅に出ます。
三途の川を渡り、閻魔庁へと向かいます。
ここで生前の善行と悪行について取り調べを受け、悪行が多いものは地獄へと落とされます。
この取り調べは、初七日から七七日まで、7日毎に7回行われます。
取り調べの長であり、かつ裁判官であるのが閻魔王であり、十王と呼ばれる十名の閻魔王がそれぞれの取り調べを司ります。

また裁判ですから、弁護士も必要です。
死者の弁護を担当するのが、そう仏さまです。
初七日には不動明王、二七日には釈迦如来、三七日には文殊菩薩、四七日には普賢菩薩、五七日には地蔵菩薩、六七日には弥勒菩薩、そして七七日には薬師如来となります。
この薬師如来の力は絶大で、無事に供養が営まれると、死者の霊は極楽浄土へと向かわせることが決定されます。

こうして死者の霊は、無事に阿弥陀仏の極楽浄土へと行くことが約束されるのです。
49日の間は忌中(きちゅう)といい、遺族が旅行や祝いの席などを慎むべきであるとするのも、裁判中に心証を損なわないための配慮なのです。
ここまでで7仏が登場しましたが、残りの3仏は百箇日(観世音菩薩)、一回忌(勢至菩薩)、三回忌(阿弥陀仏)と見守ることになります。

もともと中国では、親の死を迎えた子は、27ヶ月の間、仕事など一切の社会生活から離れて喪に服しました。
このようなことができるのは上流階級の人々だけだったでしょう。
これは儒教の「孝」の精神に基づくもので、親に対し「孝」が尽くせることは、子孫繁栄の象徴でした。
つまり、中国人にとって先祖供養とは、「孝」の実践でした。
それが仏教の中陰の思想と結びつき、服喪の期間を先祖の霊が阿弥陀仏の極楽浄土へと辿り着く期間と一致させて、十仏信仰へと展開されたのでした。


追記
閻魔王の裁判の話ですが、私たちのよく知るのは一方的に裁かれるものですよね。
でも実は弁護人として仏さまが登場し裁判が執り行われていました。
そのため、親族は心証をよくするため、49日までは旅行や祝いを避けるのですが、なんとも俗っぽい話です(^^;)
ところで結婚や年賀状などは1年間避けます。
これは、中国でもともと27ヶ月喪に服すことと関係があります。
中国での27ヶ月というのは3年に渡る期間ということですが、日本ではこれを省略して1年と前後1日ずつ、つまり366日(亡くなる前の日を1日と計算するため)喪に服すという意味なのです。
ですので、実際には年末に親類が亡くなった場合は、2年間年賀状は出せないということになるんですね。