お山のこれから。~五岳山を歩こう~
第三十二回「お山のこれから。~五岳山を歩こう~」
五つの独立峰が連なる五岳山。山ガール♪なんて言葉も流行りましたが、実は五岳山も登山家たちに愛されている山々の一つです。
いずれも標高500m以下で初心者でも比較的登りやすいと聞き、お山の歴史(※前回のまんなか。参照)も学んだことだし登ってみようかな?なんて思っていたら…
「登りやすいけどね、なめたらいかん(だめ)よ!」
そう教えてくれたのは、元・善通寺市産業振興部の石井秀文さん。退職された後も地元のためにさまざまな活動をされている方で、「五岳山縦走」の仕掛け人でもあるんです。
五岳山縦走とは、善通寺総本山の裏手にある香色山から火上山まで、空海ゆかりの五つの山を結ぶ縦走路(写真)。別名“空海ウォーク”として、10年前から毎年参加者を募っているユニークな山歩き企画です。
急な勾配もあり決して楽ではないけれど、独立峰のため万一の時もリタイアでき、とても安全なルートなのだそう。
また、香色山は先祖や家族に感謝する山、筆ノ山は学問を究める山、我拝師山は大願成就の山、中山は縁結びの山、火上山は運気上昇・商売繁盛の山として人生の幸せ祈願ができるのも魅力です。
そもそものきっかけは、石井さんが今も大切にしているキラキラした思い出でした。
「子どもの頃は日が暮れるまで野山を走り回ってね。地元の山が遊び場だった」と懐かしそうに話しながら、今の子どもたちがその楽しさを知らずに育っていることが残念だと言う石井さん。将来県外へ出て故郷の話になった時、地元の山を知らないなんて!と。
子どもたちに、故郷の思い出を―。
そんな石井さんの思いがカタチになったのは、空海生誕1200年祭を目前に控えた頃。山歩きの機会を模索していたところに、地元の高校で登山部を立ち上げた先生から嬉しい声がかかりました。
その後、地元の里山グループや自衛隊にも協力をお願いし、地域の人たちが気軽に挑戦できる縦走として、記念すべき第1回空海ウォークが決行されたのです。
当時の参加者は約200人。五岳山から見た“我が町の眺め”に感動する人たちの姿は、石井さんの目にどう映ったのでしょうね。
何をするのにも、5年10年続けるのは大変なこと。みんな年を重ねていくし、同じ場所に留まっているとも限りません。人が変われば熱意も失われていくものです。
「空海生誕1200年という時代、五岳山そのもの、そして縦走に魅力を感じ協力してくれる人たち。天の時・地の利・人の和が花を咲かせてくれたんです」
そのアツい言葉に隠されているのは、「善通寺に五岳山あり!」という石井さんの熱意。今、参加者は500人に手が届くまで増えています。
今年3月12日、五岳山の頂上に安置された石仏の開眼法要が香色山で行われました。
携わったのは善通寺市内にある曼荼羅寺、出釈迦寺、甲山寺、総本山善通寺、そして金倉寺の四国霊場5ヶ寺。古来より神聖な場として私たちの身近に存在する山でありながら、参拝の対象がなかった五岳山。そこに、五智如来様が置かれたのです。
本物の熱意って、やっぱり伝染していくのかもしれない…。
五つの山それぞれの五智如来様は、きっと、私たちを優しく見守ってくれるはずです。
子どもたちはもちろん、地域の人たちに五岳山を身近に感じてほしいと願って早や10年。
当初の気持ちはそのままに、今、石井さんの思いはさらにカタチを変えて膨らもうとしています。
「伝説の山を舞台にしたトレイルランニングを実現させたいんです」
トレイルとは登山道や林道のことを指し、舗装路以外の道を走るアクティブなスポーツ。専門誌もあるほどの人気ぶりで、富士山をはじめ、八ヶ岳や奥多摩、六甲など全国各地で特色を活かした“トレラン”が開催されています。
そういえば、五岳山周辺には第71番札所から第77番札所までの四国霊場7ヶ寺がある。1日で巡礼できる遍路として古来より受け継がれている「七ヶ所参り」を含め、五岳山の魅力をより多くの人に知ってもらうための大きな構想のようです。
安全なコース設定など課題は山積みですが、10年前に縦走を実現させた時のように、新たな10年に向けてまい進中とのこと。これはトレランファンならずとも期待しちゃいますね!
五岳山縦走「空海ウォーク」実行委員会事務局
〒765-0013 香川県善通寺市文京町2-1-1
Tel.0877-63-6315(善通寺市商工観光課内)