100年続くうどん屋さん
第六回「100年続くうどん屋さん」
香川県には本当にたくさんのうどん屋さんがあります。古い店、新しい店それぞれに魅力があって、讃岐の人は自分の好みに合う味を求めて通っています。
私にもあります、うどんを食べるならココ!と決めているお店。金倉寺から徒歩1分、いや30秒?の昔っからあるうどん屋さんが。
実はここ、『週刊スピリッツ』の連載漫画にも登場したことがある有名店なんです。
「はなや食堂」は、その名の通り元食堂です。といっても、食堂だったのは遠い昔の話で。善通寺市の陸軍第11師団初代師団長であった乃木将軍も訪れたというのですから、明治時代にはすでに暖簾を掲げていたということです。
現在の女将さんが店を継いだのが、昭和48年。なんでも、姑さんが営んでいたのを引き継いだとか。
「経験もないし、最初はできん(できない)と断わったんや」と当時を振り返る女将さん。しかし、家業を継ぐのが当たり前だった時代、親からの頼みを断われるはずもなく。偶然にもご実家が製麺所で、幼い頃から頃から麺作りを見て育ったこともあり、見よう見まねで始めたのだと教えてくれました。
ダシは讃岐うどんの基本、いりこベース。最初の数ヶ月は自分が思うような味にならず、とても苦労したそうです。
でも、そんな辛い時期を支えてくれたのがお客さんたち。試行錯誤を重ねた末、姑さんのより味が良いね!と常連さんから聞いた時は本当に嬉しかったそうです。
「私はやっぱりうどんに縁があるんやわ…」
自分の中で納得し、女将としてやっていこうと決意した瞬間でした。
姑さんはちょっとした料理も出していたそうですが、この頃からうどんをメインにし、サイドメニューとして稲荷寿司やおでんをスタート。すべて手作りで、うどんの生地は時間をかけて手でこねています。
かけうどん1杯が70円か80円の時代から物価はずいぶん上がったけれど、うどん作りへの姿勢はずっと変わらないまま。ちなみに現在は、かけうどんが170円…って女将さん!ほとんど値上げしてないじゃないですか(笑)
そんな人のいい女将さんは御年79才。一日に栄養ドリンク3本を飲んで切り盛りしているスーパーウーマンです。
さて、こちらもあのうどんブームを経験しているお店のひとつ。県内外から訪れた人たちで連日行列ができ、「お客さんが怪我をしたら困るから」と、その頃に初めて築100年になる店舗を改修。今でも歴史を感じるノスタルジックな店構えですが、傷んだ部分を補修する度に昔のことを思い出し、懐かしい気持ちになるそうです。
「今は店を継いでよかったと思っとるよ。でも、もう私も年やけんな。お金は一銭も残せてないけど名前だけは日本中に知れ渡っとるで~いうて、家族に伝えとかないかん(笑)」くしゃっと笑う女将さんの優しい表情に、こちらも思わず笑顔になります。
170円のかけうどんは、女将さんの人柄がそのまま感じられる優しい味。名物でもある黄金色をしたイイダコの天ぷらも、ビッグサイズの稲荷寿司も、女将さんの愛情がたっぷり詰まっているんだろうなぁ。
常連さんの中には、親子三代に渡ってファンの人も多い「はなや食堂」。私も我が子に、そして孫の代までこの味に親しんでほしいと思うのでした。
女将さん、まだまだ元気でがんばってね!
今日もいつものおうどん、いただきます!
はなや食堂
OPEN:10:00-15:00(麺がなくなり次第終了)
CLOSED:日曜日
〒765-0031 香川県善通寺市金蔵寺町838-2
Tel.0877-62-4334